
オーロラって、何色だと思いますか?
写真で見たことがある人なら、きっとこう答えるはずです。「緑色」。夜空いっぱいに、緑色のカーテンがゆらゆらとゆれている、あの写真です。
ところが、実際にオーロラを見に行った人の中には、こう言う人がいます。
「白っぽくて、雲みたいだった」
写真とちがう。うそをつかれた気分になりませんか。それとも、その人の見まちがいでしょうか。
じつは、どちらでもありません。
今日のクイズ
同じオーロラなのに、白っぽく見えるときと、緑色に見えるときがあるのはなぜ?
答えと解説
①暗い部屋では、服の色が分からない

夜、部屋の電気を消して、しばらくたってからまわりを見てみてください。
たんすも、カーテンも、かべも、形はぼんやり分かります。でも、色はよく分かりません。全部、灰色っぽく見えるはずです。
これは目が悪いからではありません。人の目が、そういうつくりになっているのです。
目のおくには、光を受け取る細胞が2種類あります。「明るさ担当」と「色担当」です。
明るさ担当(桿体細胞)は、とても弱い光でも働きます。そのかわり、色は分かりません。
色担当(錐体細胞)は、色を見分けられます。
じつは、色というものは、光そのものにくっついているわけではありません。
光には「波長(はちょう)」という、波のゆれ方のちがいがあるだけです。そのちがいを「色」として読み取っているのが、この色担当なのです。
ところが、色担当がその読み取りをするには、明るさ担当よりずっとたくさんの光がいります。
だから暗いところでは、明るさ担当だけが働きます。色担当はお休みしたまま。色が分からず、白か灰色にしか見えないのです。
弱いオーロラを見上げているときも同じように、光が足りなくて色担当が休んだままになります。だから色が分からず、白っぽく見えるのです。
②暗いオーロラは実際どのように見えるの?

この写真は、フィンランド旅行で撮影した「比較的弱いオーロラ」です。
私の肉眼では「白く見えた」のですが、友人の目では「緑色に見えた」と言っていて、「どの明るさから色付きで見えるのか」は人によって大きく差があるようでした。
詳しく言うと、「白く見える」というよりも「夜空に浮かぶ白い雲」のような見え方でした。
それを、スマホのカメラで「パシャリ」とするとこんなにきれいなオーロラが。
かなり強いオーロラなら、人間の目でもかなりきれいに見えるみたいなのですが、比較的弱いオーロラならスマホのカメラを通して見たほうがきれいかもしれません。
この後、深掘りしていきます。
ちょっと深堀り
①色担当は、なぜそんなに光を欲しがるの?

もっと知りたい人のために、もう少しくわしく見てみましょう。
さっき、色は光の波長のちがいだと言いました。でも光には、うんと弱いときにだけ顔を出す、もうひとつの姿があります。1個、2個と数えられる、光の最小のつぶです。これを「光子(こうし)」といいます。
アメリカ国立衛生研究所(NIH)が公開している神経科学の教科書『Neuroscience』(第2版・2001年)には、こう書かれています。
つまり色担当は、明るさ担当よりずっと多くの光がないと、目を覚まさないのです。
一方、明るさ担当は少ない光で反応できるため、人は月明かりしかない夜道でも歩けます。色は分からなくても、形と動きは見える。真っ暗な中で何も見えないより、ずっと安全です。
色をあきらめるかわりに、暗さに強くなる。人の目は、そういう取引をしているのです。
光は波であり、つぶでもある。ふしぎに思うかもしれませんが、これが今の科学がたどりついた、光の本当の姿です。
②色担当が1種類しかなかったら、どうなる?

さらにもう一歩。そもそも人は、どうやって色を見分けているのでしょう。
じつは色担当(錐体)には、3つのタイプがあります。赤っぽい光に強いタイプ、緑っぽい光に強いタイプ、青っぽい光に強いタイプです。
公益社団法人 日本眼科医会は、こう説明しています。
つまり色は、3つのタイプの反応をくらべた結果として決まります。
「赤タイプが強く反応して、緑タイプと青タイプはあまり反応しなかった」。だからこの光は赤い——。
そういう決め方です。
ところが、明るさ担当(桿体)は1種類しかありません。ある論文には、こう書かれています。
明るさ担当(桿体細胞)は、くらべる相手がいないのです。そのため、明るさ担当だけでは明暗差を白か黒かで認識するくらいしかできないのです。
③ちょっと深掘り③:目が暗さに慣れる速さも、人によってちがう

目が暗さに慣れることを「暗順応(あんじゅんのう)」といいます。
この慣れる速さは、その直前にどれだけ強い光を見ていたかで変わります。オーロラを見る直前にスマホの画面を見ていた人と、しばらく何も見ずに待っていた人とでは、同じ瞬間でも、目の慣れ方がちがうのです。慣れきっていない人ほど、色担当が起きにくく、白っぽく見えやすくなります。
年齢も、少しだけ関わります。研究によると、年齢が上がると、目が暗さに慣れるまでの時間が少し長くなるそうです。
同じオーロラを見ていても、目の状態は一人ひとりちがいます。だから、色つきに見える人と、白っぽく見える人が、同じ時、同じ場所から、両方出てくるのです。
④カメラのほうが、人の目よりよく見えている

先ほども載せた、フィンランド旅行で撮影した「比較的弱いオーロラ」です。
先ほども書いたように、私の肉眼では白く見えました。
では、なぜ同じ時に撮影した写真のオーロラは、こんなに鮮やかな緑色なのでしょう。
NOAAの同じページに、その答えも書かれています。
写真が色をつけ足しているのではありません。カメラのほうが、人の目より光をよくとらえているのです。
これは、少しくやしい話でもあります。せっかく旅行に行ったのに「写真のほうがきれいだった」とがっかりするのは、カメラの性能がよすぎるせいだった、ということになります。
⑤オーロラの緑と赤は、何が出している?

そもそも、オーロラの色はどこから来るのでしょう。
NOAAの解説によると、オーロラは、宇宙から降ってきた電子が、空の高いところにある原子や分子にぶつかって光る現象です。ぶつかられた相手が何かによって、出てくる色が変わります。
地球には磁気圏があります。
オーロラは主に、地球の磁気圏にある電子が太陽風などの影響で加速され、磁気線に沿って地球の大気に降り込むことで発生します。
いちばん多いのは、うすい緑色です。これは酸素(さんそ)の原子が出す光だとNOAAは説明しています。地上から120キロメートル〜400キロメートルの高さで多く光ります。
赤色も、じつは同じ酸素が出す光です。ただしこちらは、300キロメートルより高いところにかぎられます。
理由もNOAAに書かれています。赤い光を出す状態になった酸素は、実際に光を出すまでに150秒より長くかかります。低いところは空気が濃いので、光を出す前にほかの原子や分子とぶつかってしまい、光れなくなってしまうのです。空気がうすい高いところでないと、赤にならない——。
同じ酸素でも、出す色が違っているのは「励起状態」の違いが影響しているそうです。
興味があったら調べてみてください。
さらに、オーロラの下のふちがむらさき色になることもあります。これはちっ素(窒素)の分子が出す光で、120キロメートル〜200キロメートルという、もっと低いところから届きます。
まとめると、オーロラの色は、空のどの高さで光っているかを教えてくれる目じるしでもあるのです。緑が見えたら、そこは120キロから400キロのあたり。赤が見えたら、300キロより上。同じ空に、高さのちがう光が重なっているわけです。
まとめ
オーロラは、光の不思議さや面白さを私たちに見せてくれる、とても魅力的な自然現象です。
もし、この記事をきっかけにオーロラに興味が湧いたら、ぜひもう少し調べてみてください。
きっと、そこから宇宙や光、私たちの目の仕組みなど、さまざまなことへ興味が広がっていくはずです。
- NOAA / NWS Space Weather Prediction Center「Aurora Tutorial」
- 橘木修志・河村悟「暗所視と明所視の分子メカニズム −桿体と錐体の光応答特性を決める仕組みの探索−」比較生理生化学 第34巻3号 70〜79ページ(2017年9月21日公開)
- Purves D, Augustine GJ, Fitzpatrick D, et al.(編)『Neuroscience』第2版「Functional Specialization of the Rod and Cone Systems」Sinauer Associates, 2001
- 公益社団法人 日本眼科医会「色覚関連情報」
- Jackson GR, Owsley C, McGwin G Jr.「Aging and dark adaptation」Vision Research 39巻23号(1999年、査読誌)
- Webvision(アメリカ・ピッツバーグ大学が公開している視覚科学のオンライン教科書)「Light and Dark Adaptation」
「NOAA」はアメリカ海洋大気庁(National Oceanic and Atmospheric Administration)の略称、「SWPC」は同庁の宇宙天気予報センターの略称です。「NIH」はアメリカ国立衛生研究所の略称です。『Neuroscience』は Sinauer Associates 社が発行した書籍名です。そのほか本文に登場する団体名・書籍名は、一般に各権利者の商標または登録商標です。 本記事は2026年8月23日時点でわかっている情報をもとに作成しています。 オーロラが白っぽく見える理由についての記述は、NOAA宇宙天気予報センターの「Aurora Tutorial」に書かれている説明を、日本語に直したうえで紹介したものです。原文は英語で、訳はあざらしラボによるものです。 桿体・錐体のはたらきについての記述は、比較生理生化学に掲載された総説論文(橘木修志・河村悟、2017年)と、アメリカ国立衛生研究所のサイトに収録されている教科書『Neuroscience』(第2版・2001年)にもとづいています。色を見分けるしくみについては、公益社団法人 日本眼科医会の解説ページを参照しました。「同じオーロラでも人によって見え方がちがう理由」についての記述は、Webvision(ピッツバーグ大学)の暗順応に関する解説と、Jackson・Owsley・McGwinによる査読論文(1999年)にもとづいています。 この記事は、目のしくみについての読みものです。病気の説明や、健康についての助言をするものではありません。暗いところで見えにくい状態が続くなど、目の見え方で気になることがあるときは、自分で判断せず、眼科のお医者さんに相談してください。 オーロラの色や明るさは、そのときの状況によって大きく変わります。この記事の説明が、すべての場合にそのまま当てはまるとはかぎりません。